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PICKUP  第3回  天本森




■  敏生への想い 

 「口に合えば幸いだ。なにしろこれからずっと俺の料理で我慢してもらわなくてはならないんだからな」
 この台詞が同居(この時点では)の合図となりました。
(「触れてみたい」という衝動を自覚する暇もなく、気づいた時には既にこの状態だったのである。敏生が声をあげさえしなければ、そのまま身を屈めて、キスくらいはしていたかもしれない)

(何も動揺することはない。「弟のように可愛い」……それだけだ)  (では、有馬での一見は?弟に「キスしてみたい」なんて思う兄貴がいるものか)
 かなり動揺している天本さん。敏生は男なんだとしつこく自分に言い聞かせながらも、かなり惑わされています。
「起きたときに君が家にいないと、何かもの足りない。君が出掛けた日は、食事を作る気がしない。君が機嫌よくしていると俺もそれなりに楽しいし、君がしょぼくれていると、俺も訳もなくふさいだ気分になる。……何だろうな、これは」
 敏生に話すより、途中から自分の心に対する問いかけになってしまっていますが、これじゃあ告白ですよ…。
(森は敏生が傍らにいてくれることを、嬉しく思っている。自分の中に敏生を頼る気持ちがある)

「正直に言うよ、俺は怖いんだ。いつの間にか、敏生が俺にとってなくてはならない存在になっている……そのことが怖い。失いたくない人を持つのは、もうご免だと思っていたのにな」
 最初の頃は自分の敏生に対するもやもやした気持ちを否定していましたが、少しずつ敏生に惹かれていく気持ちを認めようとしています。
「俺がいる」  「〜世界中どこへ行こうと……俺がいる所が、いつだって君の居場所だ」

「君が世界中を敵に回すようなことになっても、俺のところへ帰ってくればいい。俺が君を守ってやる」

「どこへも行くな……。そばに……いてほしい」

「俺が死ぬときには、連れていく。行き着く先が混沌の海であろうと、輪廻の果てであろうと……手を放さない」

「……こいつのいない世界など、俺には何の意味もない」

「君を失うかと思った……。そんなことになるなら………死んだほうがまし……だ」
 傷ついたり、自分の身を挺して天本さんを守る敏生に向けて言った台詞。…シビレますね。
「俺にとって君はもう、なくてはならない人だから」

「あなたが大切にしている敏生を……俺に守らせてもらえませんか?」

「許してほしい。これから先、ずっと、俺が君と共にあることを」
 もはや何も言いません。開き直った(?)天本さんは次から次へと口説きまくりです!敏生+敏生の母に…これはもうプロポーズですよ。親の承諾も取ったし、いつでもオーケーですね。
■  トマスという男 

 家庭環境は複雑です。父・トマス(イギリス人)、母・小夜子(日本人)のハーフとして誕生。「海月奇談・上巻」において、どうやら天本さんが小さい頃に亡くなってしまったようですが、最近姉がいた事が判明。
 母親も子供の頃から心の病を持っていて、彼が高校生の頃に自殺して亡くなっています。これらに何か関係があるだろう父親には、昔から現在に至るまで、深い恐怖と畏怖の念を抱き続けています。
 
 父・トマスはかなり謎の多い人物です。職業は優秀な学者で、アジアの民俗学が専門。1年中世界を飛びまわっているらしいことが分かっています。かなり権威のようで、専門家たちの間では有名ならしいです。
 例えば、天本さんが小学生の時、拾ってきた小猫を殺すと言うエピソードがあります。自分の身も守れないのに、他の生き物を守れないと冷たく言い放つパパ…。冷酷で残忍な一面が垣間見えているところでしょう。
「あの頃は……父が好きだった。大きな人だと……頼っていい人だと思っていた」

「……いっそ……旅先で人知れず死んでいてくれたらと、そう思う」

「俺にとっては…あの人はもう、亡きに等しい存在なんだ」

「すべては儀式だ……おまえのための」

「…お前は一度はわたしに反抗し、その罰を受けるだろう。だがそれは、新たなお前に生まれ変わるための儀式なのだよ。だからこそ、わたしはお前をルシファーと呼ぶのだ……」

「そしてとうとう可愛い伴侶を見つけたようじゃないか。……あれこそ、お前にふさわしい、美しい生き物だ」
 『獏夢奇談』でとても意味深な台詞を吐いています。意味深すぎて怖い…ちょっと待て、パパは何を企んでいるんですか?何故か天本さんに関することを知り尽くしているので、(式神でも持ってる?)心底天本さんは身体が寒くなったでしょう。パパがストーカー…。
「そうか、さすがだなルシファー。まだ正しい時が来ていないことを、お前は本能的に感じ取っているのだろう。それでいい」
 敏生をもう抱いたのかどうかを尋ねた台詞です…(パパってば、そんなプライベートすぎるって…)何度か「正しい時」という言葉が出てきますが、何が「正しい時」なのか、その時が着たら何をするつもりなのか、その辺りもまだ謎に包まれています。
 天本森(アマモト シン)はシン=SIN(罪)であるとトマスは言っています。天本さんの何が罪なのでしょうか?さらに愛称としてトマスは「ルシファー(堕天使)」と天本さんのことを呼んでいて、「自らを神になぞらえている」と天本さんは考えているみたいです。
 ここでも疑問にぶつかるのですが、天本さんがルシファーと呼ばれるのは何故なのでしょうか?罪とルシファーには深い関わりがあるのは間違いないでしょう…。今後の展開はさらにその辺りに迫っていくと思われるので楽しみに待ちたいと思います。
「だが……あの少年には、まだ修行と試練が必要なようだ……」

 敏生…知らない所でこんなこと言われてますよ〜!これ意味深すぎて怖いですって、パパ…。今後、確実に何かをしでかしそうな感じでとても不気味です。そして龍珠(敏生が母から受け継いだ古の力を持つ珠)を使わないことによって、敏生の真の力を目覚めさせようとしているらしいです。
 霞波とトマスには何か関連がありそうです。天本さんは彼女が亡くなった原因がトマスにあるのではないかと疑念を抱いています。現時点では認めていませんが、詳しく霞波の事件のことを知っている辺り怪しい感じ。それが事実だとしたら…彼は一体何をたくらんでいるのでしょうか?
■  感想

 「八咫烏奇談」(1998年)に書店で運命的な出会いをしたこの奇談シリーズ。それ以来、毎回発売されるたびにのめりこんでいく自分がいました。
 第1部では、天本さんと霞波さんの秘密って何!とドキドキ、敏生の過去にホロッときたり、2人の関係の進展にはやきもきしつつもラブ度が上がっていくのがよかったです。
 第2部以降ではさらなるふたりのラブ度がヒートアップして悶絶する一方、パパ・トマスとの絡みでシリアスモードが増えてきているので、私的には期待と不安が入り混じっています…。違う意味で悶絶します…。
 長文になってしまいましたが、読んでくださった方はありがとうございました!




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